繊維の造形 現代的な結実 ファイバーアート、サイコー展
2024/03/02 京都新聞(高嶋慈・美術批評)
塩田千春、手塚愛子、照屋勇賢、竹村京、伊藤存など、「記憶」「紋様とアイデンティティ一」「修復」といったテーマから、糸や布を用いる現代美術作家は珍しくない。一方、染織作家にも、コンセプトを重視して現代美術に接近する場合もある。「ファイバーアート」は1970~90年代に隆盛したが、現在はあまり聞かれない言葉だ。だが、織る、染める、縫う、編むといった技法や繊維を用いた表現には、多様な現代性が見いだせるのではないか。
こうした問題意識から繊維の造形の可能性を考える本展は、出品作家19人のほぼ全員が染織出身。タイトルには「最高・再考・再興」が掛けられている。
自作の織機により、「織る」という技法自体を問い直すのが岩﨑萌森。古道具の子供椅子を織機として使用し、人の痕跡やモノの身体的スケールから新たな衣服を作る。宮田彩加はコンピューター制御ミシンにバグを仕込み、刺しゅうの図柄のズレやエラーに創造性を見いだす。
フェミニズム的視点から衣服を用いるのが碓井ゆいとマツムラアヤコ。碓井は、主婦など個人投資家による「内職」としての株式投資をパッチワークキルトで可視化した。マツムラは、女性の裸体をリアルに織ったボディスーツを制作一写真。「第二の皮膚」としての衣服であると同時に、着用して街を歩いた映像は、女性の身体が常に性的な視線の対象であることを示す。
伝統的な技法や素材から最も遠く自由なのが、カラフルなワイヤで言葉の形を編む村田のぞみだ。高度経済成長期に大気汚染の被害を受けた地域で聞き取った言葉を舟の形に編んだ。技法や素材の再考・逸脱・拡張が現代的な表現に結実した豊かな作品群だ。(オーブ=左京区・京都芸術大内 3日まで)